12年前日本からマウイへ引っ越してきたとき、日本にとても心残りだったのはサッカーJリーグが見られなくなることでした。でもそんなことはしばらくしたらすっかり忘れ、今はこちらでバスケットボールのNBAプロリーグとNCAA大学リーグの試合をテレビで存分に見られることが楽しみのひとつとなっています。そしてマウイでは1年に1回マウイインビテーショナルという大学一部リーグのバスケットボールの招待試合があり、目の前でプレイヤーのエネルギーを感じることのできる最高のOpportunityです。マウイローカル向けに売り出されるチケットを買うために早々と並ぶ列にはいかにもスポーツおやじといった感じの男性ばかり、そこに女ひとり並ぶ私もスポーツおやじ。
 

バスケットボールはサッカー同様、知れば知る程見ていて楽しくなるスポーツ、ボールの動きやプレイヤーの動き、決められた試合時間の中での戦略や流れなど、知性と忍耐と情熱とチームワークが勝利のカギ。 NCAA大学リーグの試合、シーズン最後のトーナメントになるとWin or Go Homeという後には何もない熾烈な戦いで、同じ位のスキルを持ち合わせたチーム同士の戦いの場合、最後にはチームの情熱指数が高かったチームが勝つんだと思います。このトーナメントはMarch Madnessと呼ばれ、要は毎年3月のこの時期、まさに熱狂のトーナメント試合です。
 

さてマウイでは6歳から参加できる地域のバスケットボールリーグがあり、小学生の学校対抗バスケットボール試合もあります。スポーツはなぜか学校対抗になると闘志むきだしになり、プレイヤーもコーチも応援にも熱がはいるもの、こちらもMarch Madnessです。この学校対抗は対象年齢9歳から11歳。正規のバスケットボール同様、ポイントガード(ボールを味方コートまで運び、ポジションについたチームメイトにパスをするなど、攻撃の起点となるポジションです)がいて、フォワードポジションにセンターポジションと、きちんと教えられたとおり組織的にプレイします。敵のディフェンダーを錯乱し盲点をついてチームメイトにパスを通すのがバスケットボールの醍醐味、しかし、このパスをだすタイミングがなかなか難しい。オープンになってパスをもらおうと動き回るプレイヤー、それを阻止しようと一生懸命ガードする敵のディフェンス。
"Pass it, now !" "Pass it, already!" (今だ、パスしろ!)と何度もパスを通せる絶好のチャンスはあるものの、このチャンスはずっとそこにはいない。アっと思った次の瞬間はディフェンダーに追い付かれもうパスができない状態になっている。動き回るプレイヤー、今だ!と思いきや、判断が1秒遅れただけで、もう Too late(手遅れ)、ディフェンダーが追い付きボールをとられてしまう。。。あっ、今だ、パス! あ〜また手遅れ。。。
Pass, NOW !と言い終わらぬうちにポイントガードの手からボールが離れ、パスがとおり、ディフェンダーがくる前にシュート、よっしゃ ! 

上手いポイントガードは一般席応援団がパスしろ!と思う前に、すでに手からボールが離れている、チームメイトが一瞬オープンになったのを見逃さず瞬時に迷うことなくチャンスをつかみにいっている、パスが通りチームメートがシュートするという成功イメージに直結した動物反射的な直感とチームメートへの信頼がチャンスをつかむ。一方、まだ未熟なポイントガードは、一体何を待っているのかいつまでたってもパスをしない、もしかしたらチームメートが10秒位ディフェンダーにつかれずにオープンになるのを待っているのか、そんな生易しいお膳立てがあるわけないよ〜。
 

こんなプレイヤーの動きを見ていて、これって人生そのものだなと思いました。Opportunity(チャンス)は目の前を絶え間なく流れるように動いている、それをつかんで活かすか、そのまま流すかはポイントガードの勘と判断次第。変な例えだけれど、流しそうめんだって、目の前を絶え間なくそうめんがながれている、意思を決めてつかむこともできるし、そのまま流し去ることもできる。人生には成功するマニュアル本もなければ誰かがしいてくれる安全な線路もない、すべて選択の連続、選択とは公平にあるOpportunity(チャンス)を自分の意思と直感でつかみにいくこと。
 

まるで偶然のようにスムーズに物事が運ぶこともある、それはきっと神様がそうしなさいっていうOpportunityだからそういうときはなされるがままその波に乗っちゃおう。
 

何をやってもどうがんばっても何もうまく行かないとき、それはただ単にまだ時期じゃないってこと、サーファーがひたすら波を待つようにプカプカのんびり浮いていよう、必ず波はやってくるーーいつかやってくるその波にうまく乗れるよう、普段から力強くパドルできる筋力は鍛えておかないと。。。準備なしではいざというときに絶好の波に乗れないから。
 

自分がやりたいこと、こうなったらいいなと思うことをいつも夢みていよう、そうすれば、それにつながるチャンスを見逃さず瞬時に判断できるから。バスケットゴール下のチームメートにパスがとおってシュートし得点できたらいいなとイメージし続けるポイントガードが、いつ訪れるかわからない一瞬のチャンスを狙っているように。
 

小学生のバスケットボールの試合、たくさんの攻撃Opportunity(チャンス)を活かさないでいる試合を見て、このエッセイが頭にうかびました。元気になれる言葉をたくさん発信し、自分も元気でありたいと思いたち、せっかくだから書き留めておこうと思いました。

basket

(文中の人称は仮名です)

by Yoko, March 2006