「おとといまでに私が送った1万通のe-mailに加えて、これが1万1通目のe-mailです。 昨晩のコンサートは最高でした。ベストを尽くし心をこめて踊った子供たちを誇りに思います。 そして、直前まで大忙しのコンサート準備に最後まで辛抱強くサポートしてくれた家族の皆さんに感謝します。ありがとう。 (フラハラウのコーディネーターより)」

無事にコンサートが大成功で終わりました。

娘のレイがフラを習っている先生とそのフラダンサーのコンサートです。

クムフラ(フラの先生。クムKumu=ハワイ語で先生という意味)は、フラの先生であると同時に偉大なるハワイアンミュージシャンでもあります。

フラハラウ(Hula Halau = フラを習うグループ)に所属していると、マウイ島内のショッピングセンターや観光客の方々が宿泊されるリゾートホテルやコミュニティイベントなどでパフォーマンスをすることは日常茶飯事ですが、2年に1回行うこのコンサートは、コンサートホールにお客さんがチケットを買って観に来ていただくマジなコンサートなので、気合いの入り方も当然違います。

コンサートの約3ヶ月前より、全員の気持ちをリハーサルモードにする為に、毎回の練習には髪をコンサートの時と同じように頭の上でポニーテールに結んでおだんごをつくりアップにしスプレーやジェルで固めた状態で参加することが義務となりました。 私は慣れない手つきで娘のものすごい量の髪の束と毎回20分の格闘です。娘には悪いけど、実は今までの過去のパフォーマンスやコンサートでも納得のいくヘアスタイルをつくれたことがありません。しかし、人間の慣れや練習の積み重ねとは素晴らしいもので、毎週毎週やっているうちにだんだん上手になり12分ほどで仕上げられるようになりました。 これはお母さんヘアスタイリストの練習期間だったのかもしれません。。。

 

約3時間弱のコンサートで子供たち(11歳から15歳位の年齢です)は3曲踊ります。 今回は3曲ともにマウイの歌で、ウリウリ('uli'uli:カラフルな羽がたくさんついたマラカス)、 プイリ(pu'ili:50センチ位の細い竹筒の棒)、 イプ(ipu:ひょうたんで作ったパーカッション)を使って踊るテンポの早い曲です。 イプは、ありがたいことに家の庭でごっそりと育ったひょうたんを寄付してくれた人がいて、子供たちが自分たちで作りました。 ひょうたんの一番上の部分を真っすぐ平行にカットし、中身をきれいにくりぬき、水できれいに中をあらって1週間ほど乾かした後、一番上のカットした部分と内側3センチ位の部分までヤスリをかけてなめらかにし、(ここからの仕上げは大人がやりました)ニスを塗って、ドリルで穴をあけて紐をとおします。 自然からの贈り物であるひょうたんはひとつひとつ大きさも形も色も違って個性的であり、まったく同じものはないのでまるで人間のようです。置いたときの傾き方や表面の模様で自分のイプがどれかすぐにわかります。

昔、娘がまだ小さかった頃、フラの先生が子供たちの為に、イプヘケ(イプヘケ=ひょうたん2つを組み合わせて作られたタイプです)を調達してきてくれました。子供たちがそれぞれ好きな形のイプヘケを選び、自分のイプヘケに名前をつけ、皆の前でそれぞれのイプヘケの自己紹介をしました。

そのときに娘のレイがつけた名前は「Crashing Waves 力強い音をたてて砕ける波」でした。

ipu (右:イプヘケ = Crashing Waves)
(左:イプ=子供たちの手作り。
今回のコンサートに使用。) 





いつものことながらコンサート直前10日前からのラストスパートは準備に追われました。

10日前には衣装の仕立て屋さんへ採寸をしに行き、8日前には夕方6時から集まり Ti Leafスカート(ティーリーフという長い葉っぱをたくさん紐で結んでスカートをつくる)を作成。
tileafTi Leafはとてもしっかりした葉っぱで生命力繁殖力が強く、ハイクやアップカントリーなどの緑の多い田舎の一軒家の庭にはよく生えています。昨年カアナパリビーチホテルでパフォーマンスをした時には、ティーリーフがジャングル状態になって山のように生えているワイルクのある人の家に全員で行き、ティーリーフを刈りにいきました。

ティーリーフスカートは、真ん中の一番太い茎(葉脈)を葉っぱから割いて取り除いてから、しっかりと1枚づつ順番に紐で縛っていき、水で濡らした大きなビーチタオルに包んでゴミ袋にいれて口を閉じ、冷蔵庫で保存、冷蔵庫の温度が冷たすぎないことだけ気をつければこれで1週間は余裕でフレッシュなまま保存できます。コンサート2日前の夜に、1週間前につくったティーリーフスカートを持って再び集まり、スカートの裾をまっすぐにカットし、葉っぱをフォークをつかって細く割く作業です。 そしてまた濡れタオルに包みゴミ袋にいれて口を閉じ、冷蔵庫へ。

(ちなみにこのティーリーフスカートがうちの冷蔵庫のスペースを使って寝ている間は、大きなジュースパックは買えず、おかずの残り物保存もできません。)

skirt

コンサートの1週間前の土曜日には朝8時から大きな体育館でリハーサル。クムほかミュージシャンたちは音合わせをしながらプログラムにあわせて順番にダンサーたちの立ち位置や登場退場のタイミングをフルミュージック、フルキャストであわせます。 いつ自分たちの出番が来るかわからないので、ひたすら待ち続け、待っている間には大人ダンサーの人や子供たちの親などから食べ物の差し入れがありと、食料持ち込み長丁場体制も万全です。

こういう時の差し入れというのはなぜかどれもこれも気がきいた美味しいもので、ホームメイドのヌードル(Chow Fun:チャウファン=ローカルの好物フードのひとつ。平べったいうどんのような麺と野菜をシンプルに塩こしょうでソテーしたものです)に、ホームメイドベーカリーから買って来たマラサダ(=ハワイ名物のドーナツです。買って来たばかりのホカホカで美味しかった。。。)に、自分でパン屋さんをやっているクレアはホームメイドのミニチョコレートマフィンを子供たちに配り、、、、クムたちミュージシャンは休憩なしのエンドレスで音合わせをしているというのに、子供ダンサーたちの待ち時間にまぎれて何もしていない私までもが、クムの素敵なハワイアン生歌を聞きながら美味しい差し入れフードを幸せにいただいていたのでした。

この日は午後3時近くにやっと子供達は終了しました。


コンサート当日だというのに、娘のレイは学校で午前中バレーボールの練習です。「今日の練習は、飛び込んでレシーブしたりとか、一生懸命ジャンプしたりとかチャレンジしなくていいからね。今日この後におよんで手首足首捻挫でもしたら、今晩踊れないからね。」要は一生懸命練習するな!と、普段言っていることとはまったく逆のつじつま合わずのことを言っている私。

午後1時からは実際の舞台でのリハーサル、その間に私はプルメリアの花で首につけるレイ (lei a'i レイアイ) 髪につけるレイ(lei po'o レイポオ)を作り、舞台リハーサルが終了したのは午後3時過ぎ。 本番前のダンサーの集合時間は午後5時です。 家に帰る時間はなくなりました。 娘のレイはコンサート会場近くの私の通うスポーツジムでシャワーを浴び、今日もマウイに吹いているトレードウインドで髪は自然乾燥、そして5時に集合して控え室でヘアスタイルを作り、私の準備に関わる役割は一応終了しました。(私はダンスしないのに、この時点でこの日やっとまともに息ができるようになりました。フーっ。。。。ダンサー娘は朝から冷静に普通に息していました。。。)



今日も吹いているマウイの風と身体を包み込んでくれる空気、肌で感じる太陽の光、広い空、植物の匂い、ハワイの花たちの色と匂い、潮風の香り、波の音、海に生きている魚や貝や海藻たち、いつもそこにあり見守ってくれているハレアカラ山、生まれ育ったハワイの土地とそれを共有する人たち。。。ここハワイに在るものすべてを長い時間をかけて肌で心で感じ、細胞の奥までその感覚すべてが記憶されている大人のフラダンサーたちは、身体の内側の奥のほうから美しさがあふれでています。 そんな内面からの美しさあふれるフラダンサーを見て、ダンスはムーブメント(身体の動き)だけではなく、その土地を愛する感情とカルチャーの表現なのだということを発見させてくれました。

コンサートは、マウイの土地と自然と人への愛情でいっぱいでした。

kani