「Dave's Dad is so cool !   デイブの父ちゃんって、すっごくかっこいいよ」と息子のカイが言います。
どうして? と聞くと、
"He is so Hawaiian, relax and laid back unlike you who always keeps busy yourself."

「いつもリラックスしてて大きくかまえてるしゆっくり話すし、まさにハワイアンスタイルそのものですっごくかっこいいよ。いつも急いでいて忙しそうにしているママとは大違いだよ」

へえ〜そうなんだ〜、せっせと忙しくしていないで、リラックスしてのんびり大らかにしているのがかっこいいんだ〜とは私の反応。

日本で高度経済成長期の親の姿を見て育ち、かつて東京のど真ん中で働いていた私にしてみれば、朝から晩まで仕事に追われて忙しくし、1日のスケジュールはびっしり、人よりも多くの仕事をこなす為に早口でしゃべり、いかにも仕事ができる人みたいに業界用語を連発し、どうやって人を説得し主導権をにぎるかという作戦に頭をつかい、さらに残業や休日出勤があるとちょっとかっこよく、国内出張に海外出張なんかがはいるとこれぞ日本のビジネスマンって感じで、そんな自分にけっこう酔いしれてたりしてたんだけど。。。

今マウイで仕事をしていても、長年身体にしみついているものは早々簡単には変わらず、リラックスしてのんびりしていることにはどうもなぜか罪悪感を感じ、いつもどこかで自分を忙しくしてしまいます。仕事をたくさんして忙しくしていることが、大人の責任と社会への義務であり、自分も成長できるとずっと思っておりました、、、がしかし、ハワイ育ちの我が子供達は、私の価値観とは全く違う価値観を持って育っておりました。

息子が言った言葉を逆に言うと、「いつも忙しく仕事ばかりしているママは、すっごくかっこ悪いよ!」と聞こえます。

忙しくしていることは誇りでありかっこいい大人なんだと思っていた私、”リラックスしている大人がかっこいい”なんて子供が言うのを聞き、衝撃的に拍子抜けをしました。

そういえばマウイに来たばかりの頃、仕事が休みの時にまでウインドサーフショップに出勤してきている私の主人に、ショップのスタッフたちは口々に "You are crazy!  So crazy!!! "(休日まで仕事するなんて頭がおかしいゼ!)と言っていました。 

ちなみにその頃のショップのスケジュールは完全週休3日制、人によってはほかにバイトをして足りない分を稼いだりしている人もいましたが、やはり基本形は仕事+海+友達(家族)=ライフスタイル。(海)の部分はもちろん人によって若干異なると思います。例えば、ウインドサーフィン、サーフィン、釣り、ゴルフ、音楽、バスケットボール、サッカー、テニス、ランニング と言った具合に。 少なくともここ(マウイ)では、仕事=自分、仕事=ライフスタイルという公式はありえません。 特にうちのウインドサーフショップの場合は人を雇う時にはその人のライフスタイルにあわせて、スケジュールを組みます。 風の吹く午後にはウインドサーフィンに行けるように午前中昼過ぎまで働いてもらって午後はオフ、土曜日は子供のサッカーの試合があるからオフ、午前中は別の仕事をしているから午後働く、火曜日と木曜日は奥さんが働いているからその日は奥さんの変わりに子供の面倒をみるからオフ、午後はコミュニティカレッジの授業がはいっているから午前中に働く などなど、完全に個々のライフスタイルを優先した勤務スケジュール体制です。 すごく大きなサウススウエル(大波)がはいったある朝、”キヘイにすっごいスウエルがはいっていて写真撮りたいから、今日はちょっと遅れて出勤するけどいい!?” なんてこともたまにはアリアリです。

もちろん小さなショップだし、なによりお互い信頼しあっているからこそ、こんなことができるとも言えます。 仲間に譲れるときに譲っておけば、自分が必要なときには自然と助けてくれるし、基本、友達や仲間が充実した楽しいライフを送っていれば自分も幸せになれるってことです。 

 

さて息子のカイがかっこいいと言ったデイブのハワイアン父ちゃんですが、何年も前に(デイブのお父さんだと認識して正式に知り合いになる前)初めて学校行事でお見かけしたときは、”怖いっ!。。。”という第一印象でした。 色の黒い肌に筋肉質のでっかい体、髪はボウズに近い位短く刈っていていつも赤か青のバンダナをかぶっており、首には銀色のチェーンネックレス、当然のことながらハワイアン特有のタトゥー(入れ墨)をいれ、ごっついアーミー服(自衛隊のような服)を着ており、そしてサングラスをはずした目はものすごく眼光鋭く、本当に怖いと思ったのです。簡単に友達になるにはちょっとほど遠いって感じでした。 

ところがところが、そんな私の第一印象はもう本当に今では申し訳ないと思う位実はものすごく間違っていて、今では会うと、くしゃくしゃに顔をくずして笑い、正面から優しく大らかな目で受け入れてくれます。 ちょっと遠くに居ても、気づくと人懐っこく近寄ってきてくれます。 息子のカイの面倒を見てくれたときがあり、”ありがとう”と言ったら、”カイは最高の男の子だよ”と言って、私を思いっきりハグ( Hug = 愛情をこめて強く抱きしめる。こちらでは親しい人に会ったときの挨拶です)しました。

デイブは自分のお父ちゃんの口調をマネをする時があります。ある日、息子のカイがほかの友達と口論になりそうになり、早口でまくしたて始めたときでした。
(すごーくゆっくりとした口調で)" Relax, Relax, just fine, everything all right, no problem." リラックスして、リラックスして、大したことないから、大丈夫、すべて大丈夫。。。

そんな風に言われると、感情的に熱くなって早口でしゃべっている自分がばかばかしく思ったのか(傍から見ていて、少なくとも私はそう思いました)、別にどうでもいいことだと気づいたのか、とにかく拍子ぬけしたようで、皆で笑って終わり、本当の口論(もしくはもっと最悪の事態)には発展しませんでした。

ところでRelax=リラックスの意味ですが、仕事も何もしないで怠慢にぐうたらしているという意味ではないということに気づきました。
”物事に動じない”と解釈するべきでした。
何か問題が起こったとき、何かトラブルが起こったとき、何か自分が欲していないような状況が起こってしまった時、腹をたてたり感情的になるのではなく、まずは状況を受け入れる大きな心を持っていることです。
生きていてすべて100%完璧に自分が望むとおりに物事が起こることはありえません。
ましてや人のせいにしたり環境のせいにしても何の解決にもならないし、かえってますます腹がたつだけです。
起こることは状況なだけであり、こんなことは大丈夫大丈夫と自分が思えば、すべては大丈夫なのです。そういう大きな気持ちでいたほうが、自分の中でストレスもなく、かえって冷静に問題解決ができたり、人をむやみに傷つけることもなく、皆平和で仲良くいられます。

"Speak Slowly, Wear Loud Shirts." という昔のハワイアンが書いたハワイアンのルールがあります。

=話す時はゆっくり、心は広く。

あ〜、そうなんだ、ここでは。
ちょっとのことで大きく反応したり感情的になったり早口でまくしたてたりすることが多いね〜私は。だからカイはデイブの父ちゃんをリラックスしていてかっこいいって言うんだね、きっと。

ゆっくり穏やかに話し、何が起こってもどうにかなるさ位のすべてを受け入れるでっかーい心をもつハワイアンスタイルが、ここではかっこいいのです。

aloha st(ここはハワイです。車のライセンスナンバーにもアロハの州とはっきりと書いてあります。ここではゆっくり話しましょう、そして心は広く!)